COMPAQ JAPAN
     No.11
(C)Copyright 1998-1999 コンパックコンピュータ株式会社

手作りボードでスーパーコンピュータ
並みの性能を達成

東京大学教養学部・宇宙地球科学教室

円盤銀河同士の合体シミュレーション。
16,000個の星が衝突する様をシミュレートしている。

銀河あるいは星雲は、1千億個ほどの恒星からなっています。
銀河同士は衝突しながら形を変え、進化していきます。
杉本大一郎教授を中心とする東京大学宇宙地球科学教室では、
銀河同士の衝突をコンピュータでシミュレーションすることを考えました。
しかし膨大な量の計算は、
大学の汎用スーパーコンピュータを使っても遅すぎて役に立ちません。
そこで1989年春、専用計算機の自作を開始し、半年後に1号機が完成。
天文学者が手作りした超高速計算機です。
現在、4号機を開発中の研究室を尋ね、杉本大一郎教授、戎崎俊一助教授、
牧野淳一郎助教授、泰地真弘人さんにお話をうかがいました。


  1. 必要から生まれた専門外への挑戦
  2. ホストにDECを採用。天文学上の成果もあがる
  3. さらに広がるGRAPE活躍の場面







必要から生まれた専門外への挑戦


 「昔はそろばんで計算したものです」とおっしゃる杉本先生の研究テーマは、星の集団である球状星団などのすべての星の運動を計算で解く、重力多体問題。使えるコンピュータのパワー不足を感じていた1988年、杉本先生は、国立天文台野辺山宇宙電波観測所の近田義廣さんの「特定の計算を専門に行うマシン(ボード)を作り、それを市販のコンピュータに接続して使う」というアイデアを知り、挑戦する決意をします。近田先生は、電波望遠鏡のデータから画像を合成するためにフーリエ変換専用の計算機を製作していたのです。

 当時大学院生だった牧野先生、神戸大学助手だった戎崎先生なども加わり、ハードウェアの勉強から始めて、天文学の研究室にハンダの臭いがたちこめることになります。 1989年秋には、第1号機が完成します。名称は、重力(グラビティー)をパイプライン方式で計算するところから、「GRAPE(GRAvity PipE)」。

 最初の性能は、120メガ・フロップス。ホストには国産のパソコンが使われていましたが、初期のスーパーコンピュータに匹敵する計算速度を達成しています。しかも総費用は20万円。当時の新聞には「20万円のスーパーコンピュータ」と表現されました。

 しかし、杉本先生の目標速度は、「テラ・フロップス」です。研究室の入口には「GRAPE Yard : aiming at a Teraflops machine.(10000 times faster than CRAY-1)」と書かれたボードが張られています。1号機に続き、すぐに2号機、3号機へと開発が進みました。




ホストにDECを採用。天文学上の成果もあがる

牧野淳一郎 助教授(手前)と
泰地真弘人さん


 途中から参加した泰地先生がコンピュータに詳しく、開発のスピードアップに大きく貢献することになります。 低価格でありながらスーパーコンピュータ並みの超高速計算を行うGRAPEは、世界各地の科学者の注目を浴び、すでにマックスプランク天体物理学研究所(ドイツ)、キール大学(ドイツ)、エジンバラ大学(イギリス)、マルセーユ天文台(フランス)などでも活用されています。

 牧野先生のGRAPEによるシミュレーションでも、これまで観測結果と理論とに相違があった銀河のコアの大きさに関する問題が解決されるという成果をあげています。 1992年度から文部省科学研究費の特別推進研究から総計約2億円の予算をうけ、現在開発中の4号機からは、GRAPEのコントロールを行うホストにDEC3000シリーズが採用されています。

 DECを採用したのは、「第一に計算スピードが速いこと。第二は、拡張バスを通じてのデータ転送が速いこと。そして第三に、OSF/1はバランスがとれたOSで、信頼性が高いこと」と牧野先生は明言します。 1995年には、世界で最初のテラ・フロップスの計算速度を誇るGRAPE4号機が完成する予定です。




さらに広がるGRAPE活躍の場面

     

(左)  杉本大一郎 教授 
(右)  戎崎俊一 助教授 


 銀河の衝突のシミュレーションからスタートしたGRAPEは、銀河のコアの謎を解明し、惑星の形成過程を描き出すなどの天文学上の成果をあげる一方、他の部門でもさまざまに貢献しています。  例えば、たんぱく質や結晶などの粒子シミュレーション。これまではむつかしかったたんぱく質の3次元構造をGRAPEが再現し、自然界に存在しない効率のよい酵素の作成、ひいては画期的な薬の発明にもつながる可能性があります。

 また、非圧縮性流体の渦糸動力学シミュレーションにも、GRAPEは活用できます。近い将来に、GRAPEがシミュレーションして開発された雑音の少ないパンタグラフを持つ電車などが作られるのも夢ではないようです。 「現在のコンピュータの世界はニューロコンピュータなどに広がり、より人間の脳に近い万能マシンの創造をめざしていますが、GRAPEは計算に特化した専用マシンです。何でもできるわけではありません。このGRAPEが、科学の進歩に役立てれば、科学者として望外の喜びです」とおっしゃる杉本先生です。

 「杉本先生にとって世界最高速のコンピュータを作ることは、実験用の器具を作ることと同じ意味あいなのでしょう」と戎崎先生は語られました。

 *GRAPEを活用した科学計算専用ボードが、ロジックハウス(東京都新宿区)、画像技研(東京都調布市)から発売されます。




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Revised : 30 April 1999