菊池@阪大(長らく行方不明)っす。 オイラー法のプログラムを書こうとして間違って最低次のシンプレクティック法 (蛙飛び)のプログラムを書いちゃうのって、ありがち。というわけで、 私がやってる数値計算の講義のレポート問題にそれ関連のがあります(と宣伝)。 オイラーのプログラムを与えておいて、"蛙飛びに直せ"っていうの(^^)。 却って複雑にする学生もいたりして、面白いっす。 それはさておき、私も赤木という名前に反応してしまいました。幸いにして 特定の声優の声で聞こえてきたりはしませんでした。だって、おいらは違うもん。 ところで、いろんな人に訊いてまわってるんですが、牧野さんの話題だから ここはひとつご教示いただけるとうれしいこと。"オルバースのパラドックスは 未解決"という説を知ってますか? #なんだか電波系みたいな文章になってしまったぞ(^^;)。
山下さん、
感想と内容の紹介どうもありがとうございます。「いきなり 4 次のルンゲ・ クッタが出てくるのは予備知識の要求水準が前書きとあわない」ってのは確か にその通りで、実際に読者に想定しているのは数値計算の入門程度の講義なり を受けるなり本を読むなりしたことがある人(極めて具体的には、研究 室に来た修士1年くらい)です。前書きはちょっとよろしくないですね。
「実地指導」という題は編者(大槻・小牧となっていますが、私は小牧さ んとしか話してません)から来たものです。で、「実地指導」というタイトル なんだから実際に指導するような気分を出したいし、とすれば対話形式かなと、、、 確かに冗長になるというか、内容が薄くなるのですが、あまり内容を詰め込む とわかりにくくなるということもまたあります。まあ、正直なところは一度 「全編対話形式」というのをやってみたかったからというだけです。ちなみに、 名前が「赤木」なのは単に内輪受けを狙っているだけで、それ以上の意味はな いです。他に「国枝」案とかもあったのですが。
シンプレクティックといえば、金沢の研究会の plenary talk で D. P. Landau が鈴木・トロッター分解の話をしたのですが、その前に鈴木先 生が自分の論文のリプリントを配って回っておられたのがなかなか印象的でし た。私も見習わないといけない。
ところで早川さん、 FMM を粘性流体にというのは voltex method で粘性をあ つかうという話でしょうか? FMM は遠距離で効く(近距離は結局直接計算す る)話ですし、粘性は本質的に近距離な話ですから、 FMM がどうっていうよ りも粘性の表現自体が難しいのではないかと思います。 FMM は FMM で繁雑と いうか、ややこしいものですが。
ついでに、「オルバースのパラドックスは未解決」という説というのは知りま せん、というか、膨張宇宙説をとればよほど変なことを考えない限り解決され てしまうように思うので、オルバースのパラドックスを復活させるためにはか なり古典的な定常宇宙(ホイルみたいなのじゃなくて、本当に定常)をとらな いといけないような気がするのですが、、、
いや、実はですね、梅原克文「カムナビ」という小説(たぶん今ベストセラー)を 読んでいたら、"オルバースのパラドックスは未解決"という話がでてきまして、 これがまた物語の根幹の部分に関わってるんです。 そんなばかなことはないだろうと思って、いろんな人に訊いてるんですが、やっぱり みんな"解決ずみ"という答え。 しかし、これが解決ずみだとすると、件の小説が全然成り立たなくなっちゃうんで、 それもまたひどい話じゃないですか。だから、万が一もしかしたら、なにかそういう 説があるのかもしれないと。もしなにかあるなら出典を知りたかったのです。 やっぱり解決済みですよね。僕もそれが常識だと思っていたので、読みながら 頭をひねりっぱなしだったんですけど。 すみません、変な話を訊いて(^^)
検索をしてみると、なんと SCI.PHYSICSで繰り返し現われる質問とその回答 - Part 2/4 - 項目 8. オルバースのパラドックス 最終更新: 24-JAN-1993 by SIC 原著者 Scott I. Chase 翻訳者 Youhei Morita http://ccce4.kek.jp/People/morita/phys-faq/2-4J.html#item8 などという文書がみつかります。 それによると、 (1) 遠距離の恒星からの光は、星間塵によって遮られている。 (2) 宇宙には有限個の恒星しか存在しない。 (3) 恒星の分布は均一ではない。例えば、宇宙には無限個の恒星が存在する かも知れないが、それらの恒星は手前の恒星に覆い隠されていて、天球 を覆いつくす恒星の面積は有限である。 (4) 宇宙は膨張している。したがって遠距離にある恒星は赤方変移のかなた に埋没してしまう。 (5) 宇宙は若い。遠距離にある恒星からの光はまだ到達していない。 (引用終わり) というアイデアが、かつてあったそうで、たいていの人は、この(4)で もって納得していると思いますが、(5)の効果の方が、定量的には 効いているそうです。 ということで、まだ社会的な?混乱??が残っていてもぜんぜん、 不思議ではないかもね。 上記URLによれば、この引用記事について: 「参考文献: Ap. J. _367_, 399 (1991). 著者の Paul Wesson は、オルバースのパラ ドックスをめぐるさまざまな混乱に終止符を打つ個人的伝道師として知られているそ うです。」 ということです。
こんなことばっかし書いてると私のキャラについて誤解を生みかねないと危惧するものである。 オルバースのパラドックスについて真面目の書こうと思っているのだが、 これから講義だ。
オルバースですが、うーん、問題の論文というのは これですね。これの このページにある図1というのが主張の根拠で、例えば Einstein-de Sitter (まあ、その、いわゆる普通な宇宙モデルです)で zf、 つまり銀河とか星が生まれる時期を変えた時に明るさがどうなるかというのを、 膨張宇宙と仮想的な定常宇宙とで比べています。なお、z は redshift で、 0 が現在、 ∞がビッグバンの時刻に対応します。遠くからの光は距離の分だけ 昔に出ているわけですが、zと時刻の関係も z と距離の関係も宇宙モデルに依 存します。で、まあ観測可能な量は z だけなので、普通宇宙論では距離/時 間の尺度に z を使うわけです。
で、この図ですが、実は2通りの読み方が可能です。
とはいえ、そんな論文がでちゃうあたり混乱があるというのは確かですね。
牧野さん それですそれです。僕も水野さん同様Phys-FAQで見て(って、Phys-FAQに出てる って教えてくれたのは野尻さんで、僕は気づかなかったんですけどね(^^)。自分で 調べたのは生協にあったいろいろな本と百科辞典と物理学辞典)、 その文献を探そうとしたのだけど、見つからなかったんです。 Astrophysical Journalのホームページには最近のしかないし、Wessonの ホームページにもなかったし。 なにが一番の原因かについては最近でも混乱があるというわけですね。 特にどれとは特定できないということかな。 まあ、「カムナビ」の主張は"理由が特定できない"ではなくて、"これまでの 理論では説明がつかない"なので、それはちょっとね(だから実は宇宙には ****が**して*****、という驚愕の真相に続くんですけどね(^^))。
僕の記事でリンクを張った先は NASA の ADS っていうアーカイブの日本ミラー サイトで、これは Astrophysical Journal, Astronomy and Astrophysics に 始まる天文学・天体物理学の有名雑誌から泡末雑誌にいたるまで、なんでもか んでもデータベース化しようというものです。古いものは本文はスキャナで取 り込んでいて、雑誌名、巻号のほか、著者名、タイトル、アブストラクトのキー ワードサーチ、果てはアブストラクトの類似度検索(つまり、ある論文とア ブストラクトが「似ている」論文を見つけてくる)というような機能まであっ て妙に便利な代物です。これとプレプリントサーバーのおかげで最近ほとんど 図書室で論文コピーということはしなくなってしまっています。
と、それはさておき、うーん、その、僕がなにか勘違いをしているのかもしれ ませんが、 Wesson の論文は算数は正しいのですが解釈は無理があると思いま す。つまり、オルバースのパラドックスというのは、結局 1/r2を 全空間で積分すれば発散するということなわけです。で、現実に発散しないの は、膨張宇宙であるために redshift で暗くなる分、つまり、なんか r の関 数 f ってのがあって、これが r が大きいと1より小さくなる効果と、それか らやはり膨張宇宙であるために、宇宙は有限の年齢をもち、銀河とか星は宇宙 よりもさらに若いという効果が合わさっているとまあいえるわけです。後者の 年齢の効果は算数としては r の積分範囲に上限 rmaxがあるということです。
で、 Wesson の主張は、 単なる 1/r2 の 0 から rmaxまでの 積分と f/r2の同じ範囲での積分を比べてあんまり変わらないから f の効果は小さいというわけです。(普通に数式で書いたほうがわかりやすい ですね、、、)ところが、 f/r2 を全空間で積分したものと rmaxまでで切ったものは実はほとんど変わらない (fは銀河が宇宙 よりも若いとしても rmaxのところでほとんど 0 だし、宇宙の年 齢に対応する r のところで 0 になりますから)わけでして、、、
というわけで、算数としてははっきりしていて、定量的な議論になにか問題が あるとか、そういうことはないと思います。 Wesson の主張のほうは、まあ、 あえて「定量的」な比較をするなら、逆だと思いますが、、、つまり、 f/r2 を全空間で積分したものと rmaxまでで切ったも のの差というのは数パーセント以下なのに対し、 1/r2 の 0 から rmaxまでの 積分と f/r2の同じ範囲での積分の差は2-3倍ですから、 rmax より f が重要というのが彼自身の計算の示していることの ように見えます。
絵にしてみると、なんかこんな積分を
|**** | * | * | * | * | ** | ** | ** | | +--------------+----- 0 Rmaxこう近似するか(fの効果のみ)
|**** | * | * | * | * | ** | ** | ** | ** +----------------**---- 0こうするか(年齢有限の効果のみ)
|************** | | | | | | | | | | | | | | | | +--------------+----- 0 Rmaxのどっちが本質か?というようなことです。あまり意味がある問題ではないで すが、あえてどっちがいいか定量的にいうなら上のほうでしょう。ここでなぜ か Wesson は下のほうがいいといい張っているようにみえるわけですが、、、
最近というかここ20年くらいの Astrophysical Journal はかなり S/N が低い雑誌ですので、「こういう論文があった」というだけでそれが正し いと思ってはいけないということはあります。その昔チャンドラセカールがやっ てたころは、全論文を彼が読んで判断していたそうなんですが、量が増えると そんなことは常人にはできないし。