銀河中心核の活動性は、銀河中心に巨大ブラックホールが存在し、そこへの gas accretionよって起こると考えられている。また、こうした銀河中心領域 へのgas accretionが急速に起こり、銀河中心領域にガスがたまる場合には、 そこで星形成が爆発的に起こり銀河中心におけるスターバースト現象がおこる と考えられている。つまり、スターバーストは銀河中心核への急速なガス供給 の過程で起こる現象と言える。さらにスターバーストを経てAGNが形成される 可能性も指摘されている(詳しくは本集録の谷口さんのページを参照)。
以上のように銀河中心領域の活動性にとって銀河中心核へのガス供給は重要で ある。このガス供給の道筋は、Shlosman et al (1990)によってダイアグラム に整理された。これによって、ガス供給と関連するさまざまな物理プロセスが 整理され、それをより具体的に明らかにする方向で研究が進展した。彼らによ れば、 銀河中心核の活動性を保ためには、銀河に存在するガスのかなりの割 合が供給される必要があるとされている。そのため、銀河円盤部のガスが銀河 中心領域に大量に供給される必要がある。そのためには、そのガスが持つ大き な角運動量を輸送する必要がある。ガスの角運動量を輸送してガスを供給する 機構としては、mergingやtidal encounterなどによって銀河にbar potential 成分が生成し、それによってガスの角運動量が輸送され、ガスが銀河中心へと 供給されると考えられた。しかし、inner Lindblad resonanceが存在する場合 にはガスはinner Lindblad resonanceに集中するが、これを越えて、その内側 に流れ込まない。このように、Sholsman et al.(1990)が銀河中心へのガス供 給機構の問題を整理してからのち、より具体的にガス供給過程の研究がなされ てきた。tidal encounter(Noguchi 1988など)、mergerによるガス供給過程 (Taniguchi and Wada 1997など)がある。
銀河にinner Lindblad resonanceが存在するときには、それがbarrierとなっ てガスをinner Lindblad resonanceの半径(1kpc)より内側に流れ込めないこと をinner Lindblad barrierと呼んでいる。Shlosmanが指摘したこのinner Lindblad resonance barrierについては、inner Lindblad resonanceに集めら れたガスに対する自己重力の役割によって乗り越えられることが示されている (Fukunaga and Tosa 1991, Wada and Habe 1992)。また、爆発的星形成領域か らの強い輻射がはたす役割(Umemura et al. 1998)の可能性や、銀河中心によ り近い領域へのガス供給過程については、ガスのbar in bar model (Hellar and Shlosman 1995)、巨大ブラックホールのガス力学への影響(Fukuda, Wada and Habe 1998) などが研究された。