さて、AGNの進化にとってもっとも問題なのは、巨大ブラックホールがいつ出 来たのかであろう。これに関しては大きく分けて、1)銀河形成以前にすでに 形成されたとするものと、2)銀河形成期に形成されとするものがある。
1)については、Umemura et al.(1993)などの研究がある。これは、
scaleの密度揺らぎが宇宙の晴れ上がり後に重力収縮を開始
し、まわりの密度揺らぎとの潮汐力で得た角運動量を宇宙背景放射との
Compton散乱でそとに輸送しながら重力収縮すると言う興味深いモデルである。
この角運動量輸送によってこの密度揺らぎの角運動量は減少し、super
massive starが不安定になるサイズの10倍程度の非常にコンパクトなガスの塊
に進化する過程が数値計算で示されている。ただ、この角運動量輸送機構が働
くためにはガスがイオン化されている必要があり、十分コンパクトなガスの塊
に進化するためにはz>400と言う時期にイオン化されている必要がある。
2)については、Haehnelt and Rees (1993)、Haehnelt, Natarajan and Rees (1998)が議論している。彼らは、high red shiftの星形成を活発に行っている 銀河の光度関数とQSOの光度関数が類似であることから銀河が形成される過程 で巨大ブラックホールが形成される可能性を議論している。彼らのシナリオは、 銀河がclustering シナリオで形成される過程で、銀河中心に形成されるガス ディスクのサイズを次のように推定し、これが進化して巨大ブラックホールが 形成されるというものである。
ここで、で定義されており、
である。このようにして形成されたガスディスクの進化は
二つの可能性が考えられている。一つはガスが自己重力不安定となって角運動
量を輸送しながら進化すること、二つめはさらに星形成が起きて、超新星爆発
がそれに引き続いて起こり、ガスディスクの中のガスのrandom motionを引き
起こして角運動量輸送を起こすことというものである。その結果、もし
のガスが1pc内に集中することが可能なら不安定なsuper
massive starが形成され巨大ブラックホールへと進化すると言うものである。
ここで、不安定なsuper massive starのサイズには
の関係がある(Shapiro and Teukolsky 1983)。ガスの質量が
であれば
となる。このような進化が可能かど
うか、より具体的に検討する必要がある。そのためには、massive gas diskの
進化、それに対する星形成の影響などをより詳細に検討し、さらに銀河形成モ
デルを用いた検討が必要である。我々以前に研究した、銀河中心における
massive gas diskの進化の研究がこのガスディスクの進化と関係するので次の
セクションで、これを簡単に紹介する。