近年、Hubble Space Telescopeや地上からの高分解能イメージングの観測に
よって、近傍銀河の中心核付近の詳細な構造が分かりつつある。その中に、M31や
NGC4486Bなどのような、際立った非対称構造を持つ銀河中心核もいくつか
見つかってきており、さらにこれらはいずれも中心にかなりの質量のブラックホール
を持っていると推定されている。矮小銀河や球状星団の降着、銀河同士の合体など
によってこのような非対称構造が一時的にできたと考えるのが最も簡単であるが、
巨大ブラックホールが中心に存在することが多いということと考えあわせると、
ブラックホールの存在が非対称構造と何らかの関連があると考えられる。
Taga & Iye (1998)は、大質量天体を中心に持つ球対称恒星系のシミュレーションを
行った。その結果、中心の大質量天体が恒星系の質量より小さい()場合には、
それが恒星系の中で安定に静止していることができず、軌道運動を行うことが
示された。また、Taga & Iye (1998)では中心に質点を持つ流体円盤の線形安定性を
調べ、そのような円盤はm=1 (一本腕のスパイラルパターン)の摂動に
対して不安定になりやすいことを示した。ここでは、流体円盤の不安定振動が
恒星系円盤でも起こるかどうか、またそれがどのようなメカニズムによるのかを
詳しく見るため、重力多体シミュレーションでその様子を追ってみた。