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2 流体円盤の線形安定性解析

まず、Taga & Iye (1998)で調べた、中心にブラックホールを持つ流体円盤の 線形安定性の結果を以下に示す。ここでは、流体円盤をKuzmin disk、また ブラックホールの重力ポテンシャルにstandard softeningを用いた。すなわち、 円盤の面密度及び自己重力ポテンシャル、ブラックホールによる重力ポテンシャルは

となる。は円盤の質量及び特徴的半径、はブラックホールの 質量及びsoftening parameterである。また、円盤の内部圧力はpolytropic relation で与えられるとした。この時、円盤の回転曲線は、

 

となる。hは円盤の温度を表すパラメータであり、この値が大きいほど温度が高く 円盤の回転速度は遅くなる。このような円盤に摂動を 与えたときの不安定成長率を示したものが図1である。ここでは、 とし、およびの場合について 解析を行った。の場合には「ブラックホール」のsoftening parameter が大きいため、その重力場が弱くなり、円盤の振舞いにほとんど関係がなくなると 考えてよい。また、m=1のモードについては、 中心のブラックホールを人工的に固定した場合と自由に動ける場合との両方に ついて考えた。m=2のモードにおいては、摂動の空間的対称性のため、ブラック ホールは円盤の中心から動かない。詳しい解析の方法についてはTaga & Iye (1998) を参照していただきたい。この図から、以下のことが読み取れる。

  1. ブラックホールにあてたsofteningが小さい方が、不安定成長率は 大きくなる。
  2. 中心にブラックホールを固定した場合、softening parameter eが小さく なるとm=1のモードがの範囲で卓越してくる。
  3. ブラックホールを人工的に固定しない場合、上述のm=1の不安定モードが 消えてしまう。
  4. そのかわりにより温度の高い所で別のm=1の不安定モードの 列が現れてくる。
いずれにしても、円盤の質量に比べて軽いブラックホールが存在すると、 m=1の摂動に対して不安定になりやすいことが分かる。

  
図 1: m=1,2の摂動に対する円盤の不安定成長率。横軸は円盤の内部温度。 ○... m=1かつブラックホールが自由に動ける。×... m=1かつブラック ホールが中心に固定されている。□... m=2



Jun Makino
Wed Mar 17 18:02:28 JST 1999