図2の例(でブラックホールを固定)では、
ToomreのQ値のプロファイルは、最低でも2.0程度になる。それにもかかわらず、
図2で顕著な一本腕のスパイラルアームが現れることは、
非常に興味深い。また、ブラックホールを固定しない場合にはそれが消えてしまう
ことも確認された。
このことは、以下のように解釈できる。固定されたブラックホールの近傍では、 それぞれの粒子の軌道はKepler的になる。すなわち、ブラックホールの位置を 焦点とする楕円軌道となる。楕円軌道は、円軌道をm=1で変形したものであるから、 ブラックホール近傍では、m=1に変形された軌道を持つ星が多く存在することになり、 それらが自己重力によって軌道を揃え、一本腕のスパイラルアームを形成すると 考えられる。ところが、ブラックホールが固定されていないと、形成された スパイラルアームが作る重力によってブラックホールが移動するため、周囲の 星は安定な楕円軌道を持つことができなくなってスパイラルアームが破壊される。 したがって、ブラックホールは中心に安定に静止していることはできないことになる。 静止しようとすると、スパイラルアームが形成され、それにしたがってブラック ホールは動くようになると考えられる。
実際の銀河中心核は円盤で近似できるものではないため、より現実的な三次元の モデルを用いて同様のことが起こるかどうかを確認する必要がある。また、 このような銀河中心核内にガス成分が存在する場合に、ブラックホールの 運動やスパイラルアームが与える影響を調べる必要がある。