このような不安定が、本当に銀河中心核恒星系で起こる可能性があるかどうかを
調べるため、線形安定性解析で用いたモデルに対応する恒星系円盤のシミュレー
ションを行った。ディスクの密度分布はKuzmin modelに従うとし、また回転曲線も
式(3)に従うとした。線形解析との対応を見るため、速度分散は
等方的であるとした。ブラックホールはsoftening parameterをとして、
をさまざまに変え、人工的に中心に固定した場合と自由に動ける場合との
両方について、円盤の変化を追ってみた。ここではtree codeを用い、粒子数
32768対で計算を行なった。
まず、線形解析の結果 4 に、「円盤の温度が高い()」かつ
「ブラックホールが固定されていない」場合に不安定モードが現れると述べたが、
予想されたようなスパイラルアームはここでは現れなかった。このような
モードは流体円盤にのみ現れるものと考えられる。
一方、線形解析の結果 2、3 は、このシミュレーションでも確認された。
図2、3は最も顕著な一例である。
ブラックホールを固定した場合(図2)は非常に強い一本腕
(m=1)のスパイラルアームが現れるが、固定しない場合(図3)では
現れない。この傾向は、
の時に
の範囲において再現された。
一方、円盤の温度に対しては顕著に変化し、
とするとスパイラルアームは
ブラックホールを固定してもしなくても現れなくなった。
図 2: ブラックホールを中心に固定した時のKuzmin disk
の時間発展。強い一本腕のスパイラルアームが現れる。
図 3: ブラックホールを固定しない場合のKuzmin diskの時間発展。
一本腕のスパイラルアームが現れなくなる