以上の考察において、式3 はもっともらしいとはいえ物理 的な根拠があるものではない。これは本当に正当な仮定といえるだろうか。
ここで、一つ注意を喚起したいことがある。それは、式 4から
直ちにわかるように、ここで求めた解では が
に依
存しない定数になっているということである。これはすなわち、
を
変えた時の運動が、時間スケールの他は完全に同一であるということを意味す
る。言い換えれば、式3の仮定はもっと緩めることが出来
る。例えば、比例関係ではなく
の何らかの関数であるという
だけでも構わない。
これはかなり一般的な仮定であり、要求することにそれほど無理はないであろ
う。従って、仮に式3が厳密には正しくなくても、前節で
得た結果は正しいということが示されたことになる。
ただし、これが成り立つのは散逸が角速度の 3 乗に比例する場合だけである。 空気抵抗以外がドミナントであったり、あるいは小リングがゆっくり回ってい てストークスの公式のほうが適切であるような場合にはこれはなりたたないこ とになる。
上の考察では、単一リングの場合だけを考えた。実際のジターリングでは、図
1 に示したように5個の小リングがあり、それらを同時に回すことができる。
実験の結果では、多くの場合に小リングがほぼ等間隔に並ぶ。
この場合、 v はすべて等しいのに、 がリング毎に異なる。
これはどのようにして可能になっているのであろうか? 一つのリングの時に
考えた理論では、 v を決めれば
は決まってしまう。これは小リン
グがすべて一点に集まらないといけないということを意味しているように思わ
れる。
一つの可能性は、リング間に何らかの相互作用があるということである。大リ ングは実際には剛体ではなく変形するので、それを通じて小リングの間にはカッ プリングがある。それがなんらかの反発力として働いている可能性はある。