ガスおよび星の粒子分布を見ると、 ガスに強く複雑な渦状構造があらわれ、 一方星の円盤には弱いコントラストのスムーズな渦状構造が現れる。
ガスは様々な二次的な構造が現れ、時間的に変動するので、 グローバルな渦状パターンを抽出することは困難である。
一方、星の円盤には比較的レギュラーでグローバルな渦状構造が現れれるが、 コントラストが弱く、やはり一見グローバルな渦状パターンを 抽出するのは困難にみえる。
そこで、B.B.Elmegreen,D.M.Elmegreen & montenegro(1992) が銀河の輝度分布の 解析に用いた方法を応用してみた。
銀河面内の各点 における輝度分布(密度分布)
が与えられたとき、
2本腕成分を取り出すときは、
また、3本腕成分を取り出すときは、
を計算する。 ここで、括弧の添え字 T は 括弧内の値が負になるときは 0 にすることを表す。
このような をプロットすると、
元の粒子分布では殆どわからなかったようなm本成分を
取り出すことができる。
ガスについては、二次的な構造や枝分かれが多く、 また、時間的な変動も激しいので、 このような方法でも、グローバルな渦状構造を取り出すことは難しい。 しかし、星粒子の分布について適応すると、そのままの粒子の分布図ではコントラス トが小さくて殆どわからなくても、このような処理をすると、グローバルな渦状パタ ーンが現れてくる。
そのようにして、2本および3本の渦状パターンを取り出し、 回転角速度やパターンの動径方向の広がり等を調べた。
この結果は、シミュレーションだけでなく、 赤外線等によって星の円盤の輝度分布が得られれば、 適切な解析を行えば、密度波のいろいろな波動パターンを抽出することが 可能になることを示している。
グローバルな渦状パターンの動径方向の広がりを見ると、 2本腕の方が3本腕より動径方向の広い範囲にトレーすることができる。
これは、分散関係から導かれる性質と良く一致する。 分散関係からは、密度波の存在する領域(伝播領域)が 内と外のLindblad 共鳴の間に存在することが知られているが、 一般に、腕の本数が増えるとその領域が狭まる。 数値実験の結果は、 分散関係から得られる伝播領域に良く一致する。
これらの腕は独立に異なる回転速度で回転し、
パターンスピードを比べると、
2本腕は km /s/kpc、
3本腕は
km /s/kpc
となり、その比はおよそ 3:5 となる。
3本腕が2本腕より速く回転し、追い越してゆく事になる。
これらの位相の関係によってバラエティーにとんだ
多重渦状腕構造が現れる。
パターンスピードを理論的に計算することは難しいが、
その比は Lin & Shu の分散関係から計算できる。
パターンスピードは、inner Lindblad 共鳴のにおける
に等しいので、
パターンスピードの比は計算することができる。
この値は、モデルのパラメータを用いると、3/5 になり、数値実験の結果と良く一致 する。
これらのことから、ここで得られた2本および3本の渦状パターンは密度波の独立した
波動モードと解釈できる。