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3 2本および3本腕の分離

ガスおよび星の粒子分布を見ると、 ガスに強く複雑な渦状構造があらわれ、 一方星の円盤には弱いコントラストのスムーズな渦状構造が現れる。

ガスは様々な二次的な構造が現れ、時間的に変動するので、 グローバルな渦状パターンを抽出することは困難である。

一方、星の円盤には比較的レギュラーでグローバルな渦状構造が現れれるが、 コントラストが弱く、やはり一見グローバルな渦状パターンを 抽出するのは困難にみえる。

そこで、B.B.Elmegreen,D.M.Elmegreen & montenegro(1992) が銀河の輝度分布の 解析に用いた方法を応用してみた。

銀河面内の各点 における輝度分布(密度分布) が与えられたとき、 2本腕成分を取り出すときは、

また、3本腕成分を取り出すときは、

を計算する。 ここで、括弧の添え字 T は 括弧内の値が負になるときは 0 にすることを表す。

このような をプロットすると、 元の粒子分布では殆どわからなかったようなm本成分を 取り出すことができる。

ガスについては、二次的な構造や枝分かれが多く、 また、時間的な変動も激しいので、 このような方法でも、グローバルな渦状構造を取り出すことは難しい。 しかし、星粒子の分布について適応すると、そのままの粒子の分布図ではコントラス トが小さくて殆どわからなくても、このような処理をすると、グローバルな渦状パタ ーンが現れてくる。

そのようにして、2本および3本の渦状パターンを取り出し、 回転角速度やパターンの動径方向の広がり等を調べた。

この結果は、シミュレーションだけでなく、 赤外線等によって星の円盤の輝度分布が得られれば、 適切な解析を行えば、密度波のいろいろな波動パターンを抽出することが 可能になることを示している。

3.1 渦状パターンの動径方向の広がり

グローバルな渦状パターンの動径方向の広がりを見ると、 2本腕の方が3本腕より動径方向の広い範囲にトレーすることができる。

これは、分散関係から導かれる性質と良く一致する。 分散関係からは、密度波の存在する領域(伝播領域)が 内と外のLindblad 共鳴の間に存在することが知られているが、 一般に、腕の本数が増えるとその領域が狭まる。 数値実験の結果は、 分散関係から得られる伝播領域に良く一致する。

3.2 パターンスピード

これらの腕は独立に異なる回転速度で回転し、 パターンスピードを比べると、 2本腕は km /s/kpc、 3本腕は km /s/kpc となり、その比はおよそ 3:5 となる。 3本腕が2本腕より速く回転し、追い越してゆく事になる。 これらの位相の関係によってバラエティーにとんだ 多重渦状腕構造が現れる。

パターンスピードを理論的に計算することは難しいが、 その比は Lin & Shu の分散関係から計算できる。 パターンスピードは、inner Lindblad 共鳴のにおける に等しいので、 パターンスピードの比は計算することができる。

この値は、モデルのパラメータを用いると、3/5 になり、数値実験の結果と良く一致 する。

これらのことから、ここで得られた2本および3本の渦状パターンは密度波の独立した

波動モードと解釈できる。



Jun Makino
Wed Mar 17 17:53:00 JST 1999