= 1 truecm =1 true cm
球状星団中の赤色巨星は、星ごとに C、N、O、Ne、Al 等の組成の大きな変動を示す。 これらは、核反応生成物が表面に輸送された結果と考えられ、恒星内部で現行の理論の枠組みを超える核種合成と物質混合の機構が作用していることを示唆している。 最近の観測結果から課せられた制約を考慮して、組成異常の形成機構の新しいモデルを提起する。 この組成異常の特徴は、球状星団の巨星にかぎられ、星団外の halo の恒星では観測されていない。 したがって、この現象を、星団内の恒星が密集した環境と結び付けて捉えるのが自然であろう。 個々の球状星団から観測される組成異常と星団の力学的な構造、性質との関連について調べることによって、星団内における恒星同士の相互作用がもつ、恒星の構造進化への影響、また、星団の進化への効果について議論することができる。 また、赤色巨星段階での物質混合は、後続の水平分枝の性質を通して、球状星団までの距離、年齢の推定に影響するので、この可能性について検討する。